文学部横断型人文学プログラム

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-国内有数の高度専門研究-

『身体のリベラルアーツ
(必修科目「ウエルネスと身体」テキスト)

身体はメディアである ~身体知とウエルネスの探求~

編者:上智大学保健体育研究室

身体をめぐる諸問題を理論的にかつ実践的に体験するための羅針盤

本書はタイトル「身体のリベラルアーツ」が示すように、身体をめぐる諸問題を理論的にかつ実践的に体験するためのテキストである。理論編は「スポーツと身体・身体文化」と「健康のリテラシー」から構成され、前者には物理的身体論を超える身体への新たな視座が提案されている。また後者は、巷の健康・体力づくり運動に象徴されるトレーニング理論に終わることなく、健康概念の精査と社会的健康論の必要性が掲げられている。身体を対象化した議論が前編ならば、後編は「身体のレッスン」「フィットネス」からなる方法としての身体実践編である。前者はオリンピックを頂点とした近代スポーツの競争原理や業績志向を離れ、自身のありのままの身体と向き合い、経験する身体を覚醒する試みである。また後者は、現代社会を生き抜く身体の総合的コンディショニングに配慮し、ウエルネスの視点から各論を組み立てている。これまでの保健体育テキストのイメージから離れ、身体とウエルネス(総合的健康)を知識として学ぶだけではなく、リベラルアーツの立場でそれらを経験しながら理解を深める企画構成となっている。

「身体が知そのものであることを学ぶ」その手がかりとしてのテキスト

世にある保健体育のテキストの多くは、身体をカラダとして対象化し、生理学や解剖学・医学の知見をベースにカラダの機能を高める視点や健康論の観点から種々のノウハウが展開されている。しかし、本テキストではそれらを踏まえた上で、身体を「身体知」や「身体性」の視点から捉え直し、知識の入れ物としてのカラダではなく、身体が知そのものであることを前提にその後の論を展開している。したがって身体をメディアとして使用する身体的コミュニケーションが主要なテーマとなり、それらに関連するボディーワークが紹介されている。またテキストを使用する立場から、総論だけでなくアラカルトとしてテーマ設定し、対象となるクラスの特性(学部・学科による興味・関心の違い)に合わせてトピックを提供できるよう工夫している。本テキストはあくまでも執筆者(研究室)独自の考え方であり、学習者にとってそこに「正解」があるとは限らない。記述されている見方を手がかりに、己の経験と批判精神を駆使して身体やウエルネスと格闘し、考えるための素材として位置づけている。

編者からのメッセージ

本学では全学共通科目として「ウエルネスと身体」(必修2単位)がある。自由化が声高に叫ばれた大学改革の過程でも選択科目とはならず、必修として評価され今日に至っている。その裏には、研究室をあげてテキスト改革に挑んだ10年あまりの歴史が実は隠されている。特に「健康・体力づくり」テキストからの脱却は想像以上に困難な作業であった。新しい視点からの「身体論」と、個人を超えた社会的・文化的視野を組み込んだ総合的健康論「ウエルネス」の合体は数多くの論争の成果であり、ゆえに「上智モデル」となった。

※本ページの情報は作成時(2013年度)の情報にもとづいています。