文学部横断型人文学プログラム

お知らせ

2022年度文学部・文学研究科教員FD研修会を開催しました

 2023年1月18日(水)に、「文学部の教育・研究の魅力と意義をどう伝えるか(学内・学外への発信)」をテーマに、文学部・文学研究科教員FD研修会を開催しました。

テーマ
「文学部の教育・研究の魅力と意義をどう伝えるか(学内・学外への発信)」

趣旨

 七、八年前に文系学部無用論が衆目を集め、人文学の教育・研究に携わる者に衝撃を与えたことがあるが、現在ではむしろ人文学の意義が見直される傾向すらある。しかし、依然として人文学の教育・研究を取り巻く環境は厳しく、人文学関係の学部・学科は縮小や改組の圧力に曝されている。人文学の教育・研究の主な担い手である文学部の教員の間では、文学部が「文学部」として、各学科が各学科として存続し、文学部の教育・研究の伝統が保持されることが望ましいという大まかな合意があると思われるが、それが今後可能であるためには、文学部の魅力や意義をどのように学内外に伝えていくかをよく考える必要がある。

 そこで、本年度の教員研修では、文学部の魅力と意義を、学内外にどう伝えるか、をテーマに意見交換を行いたい。学内とは、本学の学生、教職員はもちろん、経営者も含む。学外とは、高等学校の関係者、広く教育関係者はもちろん、一般市民も含む。文学部の魅力や意義を伝えるためには、まず文学部の教育・研究に携わるわれわれがその魅力と意義を明確に語ることができなければならない。次に、それを発信する方法を考える必要がある。今回は前者に重心を置き、時間の許す限り後者も考えてみたい。この作業は、文学部の将来構想にも関わるという意味でも重要であると考えられる。

日時

2023年1月18日(水)16:50~18:40

開催方法

Zoomによるオンライン開催

プログラム

司会 文学部長 寺田 俊郎
報告 哲学科 長町 裕司
史学科 北條 勝貴
国文学科 福井 辰彦
英文学科 下條 恵子、町本 亮大
ドイツ文学科 小松原 由理
フランス文学科 ミカエル デプレ
新聞学科 国枝 智樹
質疑・意見交換
閉会の辞 文学研究科委員長 長尾 直茂

概要報告

 本研修では、教員が文学部の教育研究の意義を自覚し、共有するために、各学科の報告をもとに、学科の魅力や意義、そしてそれを発信する方法について考えた。

 哲学科からは、哲学には人文学とは異なる基盤があるものの、哲学が人文学的伝統と深く関係しているために、哲学の科目において人文学的な理解を要すること、人文学的知は自らの生をよく生きる(well-being)上での糧となり、自己形成を深めるものであることが報告された。

 史学科からは、一般社会を生きる人々との協働作業により、歴史研究を専門家による独占から解放し多様な人々が連携する実践へと導くパブリック・ヒストリーの考え方が紹介された。学術研究がトゥーパブリックな面をもつことは言うまでもないが、同時に協働に重きを置くインパブリックな活動の重要性が指摘され、史学科がおこなうインパブリックな活動について報告がなされた。

 国文学科からは、漢文輪読会の参加者への聴き取りをヒントに、漢文や文学を学ぶ意義について考察が提供された。文学部の必要性について参加者からは、将来に対する明確な考えを持たない学生が自分を見つめ直すことができる、目に見えない問題に思いを巡らすことができるといった声があり、教員自身の考えと近しい回答が多かったことが報告された。

 英文学科からは、学科の新たな取り組みが紹介された。新入生の多様な学習歴に応じて個々人に適した学習コンテンツを用意するため、Moodleを活用した学習コンテンツの拡充がなされていることや、学習コンテンツを一般向けに出版する企画が進行中であることが報告された。

 ドイツ文学科からは、人文学の魅力と意義について学生にアンケートをおこなった結果をもとに報告がなされた。学科内部では「無用の美」の考えが多く見られた一方、外側へと説明できる説得力を持たせるために、ドイツ文学科の学びを「戦争を繰り返さないために必要な学問」、「社会におけるダイバーシティー実現に役立つ学問」と説明するなどの、具体的な提案もなされた。

 フランス文学科からは、フランス語の習得は差異を学び、他者性に親しむことに繋がり、また異なる思考方法の習得により自己の拡大にも繋がることが報告された。さらに、文学テクストの読み方を学ぶことは他者の話に耳を傾けることであり、この聴くという能力が今日の社会に必要なものだと指摘された。

 新聞学科からは、学科の魅力として伝統や専門性だけでなく学際性、国際性も兼ね備えていることが指摘された。また、文学的、社会学的視点を要することなど、新聞学科と文学部との関わりが説明され、人材育成の拠点やメディア関係の研究拠点としての新聞学科の意義が報告された。

 続く意見交換の時間では、無用の美という考え方について議論が発展し、文学部の実用性について、また、実用的とは何かについて議論を深めた。