文学部横断型人文学プログラム

横断型人文学プログラム

身体スポーツ文化論コース

世界のスポーツ・身体文化論

 文学部の瀬戸邦弘先生による応援団文化についての講義でした。

 明治期に生まれたバンカラ文化の流れを汲む応援団は、精神性を重視し、応援団旗を神聖なものとして扱う慣習など、近代からの価値観を共有しながら成り立っています。

 また、応援団全体を体現する存在である団長は、その歴史的な役回りを継承する器としての身体であるという点で、歌舞伎役者と通ずるものがあると先生は言います。

 歴史や伝統を受け継ぎながら独自の行動様式や人間関係を維持する応援団が、ひとつの文化であることが分かりました。

身体・スポーツ・社会Ⅰ

 「身体・スポーツ・社会Ⅰ」では、スポーツと社会の関係について、サッカーを中心に、様々な視点から考察していきます。

① サッカーとデータサイエンス―女子サッカーを中心に―

 筑波大学の平嶋裕輔先生による講義でした。

 テーマは、サッカーの分野におけるデータサイエンスの活用とその問題点について。

 何度も背後へロングボールを出すプレイをしているなら、そのようなプレイが得意なチームであると考えるゲームパフォーマンス分析(質的分析)や、ゴールキックとコーナーキックの本数を見て自分のチームが攻めることができていたか否かを判断するパフォーマンスの数値化(量的分析)といった、データの有用性にかんするお話がありました。

 一方で、データはあくまで判断や戦術を補うものであり、データを実際のパフォーマンスにどこまで反映させるかは各人の判断に委ねられているとのこと。統計学に精通している半面、現場のことは知らないデータサイエンティストと、統計学のことを知らないスポーツ現場のプロの間ではデータが有効に活用できないため、現場に精通したデータサイエンティストの育成が現状の課題だそうです。

② サッカー(スポーツ)のわざは伝えられるのか?

 日本大学の北村勝朗先生による講義でした。「わざ」の定義にはじまり、「わざ」の熟達の条件や特徴、熟達に必要な段階、教育方法としての「わざ言語」についてのお話がありました。

 「わざ」とは、「手先の器用さ」を超えた、身体的訓練を通して知る「素材」の活かし方等の、知的な「総合的判断力」のこと。形をつくる(矯正する)のではなく、目指すわざ(動き)の感覚になるように選手を導くことが指導者の役割であり、そのために用いられるのが、比喩的な表現によって相手の嗜好や行動を導き出す言葉(「わざ言語」)です。ただし、「わざ言語」の効果は指導者と選手の間で感覚の共有ができてはじめて発揮されるため、指導者は自分自身の感覚に固執せず、常に選手の感覚に向き合わなければならないとのことでした。

③ 地域コミュニティの社会的役割とスポーツの可能性 少年サッカーコーチの経験から

 本学経済学部の川西諭先生による講義でした。

 かつての日本に存在していた地域における人々のつながりの再構築のために地域の少年サッカーチームが果たせる役割について、コーチの立場からお話しいただきました。

 サッカーは、チームプレーを通して子どもたちに人との関わりの大切さを教えると同時に、子どもたちの成長を見守る親たちのコミュニティまで構築するとのこと。

 チームの人数を少なくして皆にボールに触れさせる、レベル別にわける、ゴールの大きさを変えるといった、子どもたちに思い切り楽しくサッカーをしてもらうことを目指した最新の指導法についても知る良い機会になりました。

④ なぜ、東京23区にJクラブは存在しないのか?―東京武蔵野ユナイテッドFCの挑戦―

 株式会社東京有明アリーナ代表取締役社長兼東京武蔵野ユナイテッドFC強化担当の人見秀司先生による講義でした。

 東京23区をホームとするJリーグクラブを作ろうと、東京ユナイテッドFCを立ち上げられた先生からは、国家の体制とJリーグクラブの興隆との関係(ドイツのような都市国家では各都市に経済力があり、クラブが繁栄する)や、文武融合の理念(座学でない学びが、人生を豊かにしてくれる)について伺うことができました。

 東京にJリーグクラブが存在しないのには、学校の設備が充実し過ぎている、スタジアムやコミュニティがない、キリスト教国のように日曜が休みでないため、エンタメが充実しているといった様々な要因があるそうです。

⑤ SNS時代のジャーナリズムとメディア・リテラシー

 サッカージャーナリストの小澤一郎先生(株式会社アレナトーレ)による講義でした。

 「媒体」よりも「個人」に重きを置くSNS時代のジャーナリズムの特性(海外メディアでは署名記事が当たり前で、ジャーナリスト目当てに記事が読まれる)や、メディア・リテラシーの問題(世界中の情報へのアクセスの容易さ、AIによるリコメンド、溢れるファストコンテンツがかえって、スマホ1台で完結する閉ざされた世界を構築してしまう)について、理解を深めることができました。

⑥ スポーツ現場から見えるもの、語ること―新聞記者の視点から―

 朝日新聞社の潮智史先生による講義でした。

 スポーツ記事は単なる試合結果の報告ではなく、繊細な技術、勝負のあや、心の動き、喜怒哀楽といった、見えないもの、背景にあるもの、透けて見えるものを読者に伝えるエンターテインメントであるというお話でした。しかし、その一方で、経済や社会変化とは無縁ではいられないスポーツの現実を示す媒体でもあることを、先生が執筆された、サッカー王国ブラジルからまだうら若い選手が欧州へと流出している現状を伝える記事を通して学びました。

⑦ 女性アスリート(フットボーラー:主審)のキャリア開発と展開

 小泉朝香先生(国際主審/JFA女子1級審判員、株式会社三勢)による講義でした。

 日本に60名ほどしかいないJFA(日本サッカー協会)女子1級審判員(レフェリー)であり、その後FIFA(国際サッカー連盟)女子国際主審にも登録された先生からは、女子レフェリーの現状について興味深いお話を伺うことができました。

 現在日本サッカー協会に雇用されているのは男子のみで、女子レフェリーにプロはおらず、先生ご自身も、一般企業に勤めながら世界を飛び回っていらっしゃるとのこと。

 それでも、女子選手が女子レフェリーに先駆けてプロ化(2021年9月12日にWEリーグがスタート)したり、女子レフェリーがJリーグ(男子)の試合で笛を吹くようになったりと、サッカー界における女性の地位には向上の兆しがあるようです。

⑧ サッカーとサイエンス

 筑波大学の浅井武先生による講義でした。

 FIFA公式のボールの変遷を、先生が持参された複数のサッカーボールに触れながら辿るというのは、なかなかできない貴重な体験です。1970年のテルスター(最初の公式ボール)には32枚あったパネルが6枚にまで減ってより球に近い形状になっていることや、コンピューター技術を駆使した複雑なデザインが可能になったことを実際に目で確認して、サイエンスの力がサッカーの歴史を作っていることを実感しました。

⑨ サッカーで社会をつなぐ―安英学の視点―

 ジュニスターサッカースクールの代表をされている安英学(アン・ヨンハ)先生のご登場です。

 JリーグとKリーグでのプレー、W杯本大会への出場と、プロサッカー選手として輝かしいキャリアをお持ちの先生ですが、選手権での敗北から、Jリーガーになる夢を断念された時期もあったとのこと。在日の先輩の支えによって、再びプロを目指す決意をなさったそうです。

 現在代表を務めていらっしゃるサッカースクールでは、「人と人とをつなぐ」という理念のもと、朝鮮学校を訪問したり、トレーナーや管理栄養士を呼んだり、強豪校との試合を企画されたりと、プロ選手としての経験を活かしたご活躍をされています。

⑩ プロ選手経験のないプロサッカーコーチのコーチング方法

 名古屋グランパスコーチの大島琢先生(ご登壇当時の所属はFC東京)による講義でした。

 職業としてサッカーコーチを志された先生が、自身の経験という裏付けを持たずにどのように選手を指導していらっしゃるかについて、お話を伺いました。

 大事なのは、選手の話を聴いて一旦は受け止めること、選手のタイプに合わせたアプローチをすることだそうです。選手のタイプを識別するのに役立つVAKモデル――映像での説明が有効な視覚タイプ(Visual)、言葉での説明が有効な聴覚タイプ(Auditory)、実際に体験させるのが有効な身体感覚タイプ(Kinetic)――についてのご説明もありました。

⑪ グラスルーツサッカーの大切さと子どものサッカー指導

 JFA技術委員会普及部会長の中山雅雄先生による講義でした。

 グラスルーツとは、プロフェッショナルと競技志向の高いユースを除くすべてのサッカー活動を指します。ところが、先生によれば、すべてのアスリートはグラスルーツから生まれるとのこと。楽しみの中で真剣勝負をする、段階を踏みながら学ぶ(少ない人数同士で対戦した方が、サッカーらしいプレーができる等)といった、子どもに無理をさせず、年齢に即したやり方でサッカーとの関わりを持たせることが大切だというお話でした。

⑫ サッカー文化の構図

 本学保健体育研究室(2022年度以降、基盤教育センター身体知領域)の鈴木守先生による講義でした。

 いつの時代においても、地域アイデンティティやナショナルアイデンティティを醸成する役割を果たしてきたサッカーですが、その本質は、足(アウト・オブ・コントロール)の世界であるということ。

 操作的、理性的な手に対して、足は、偶然性、反秩序、即興性、曖昧さに属しており、多様なサッカースタイルが存在するのも、足の文化論との関わりによるところが大きいというお話でした。

⑬ チームスポーツのコーチング 筑波大学蹴球部を例に

 小井土正亮先生(筑波大学蹴球部監督)による講義でした。

 筑波大学蹴球部では、「よい選手・よいチーム・よい指導者」という理念のもと、学生たちの自主運営によって成り立っており、選手と、選手のサポートをするスタッフ(コーチングスタッフ)、チーム(メディカルチーム、パフォーマンスチーム)が一丸となって試合に臨んでいます。

 より良いチームづくりのために、セルフマネジメントシートの作成(これまでの自分と、なりたい自分について書き記すことで、目標を明確にする)、自己評価と他者評価の比較といった試みがなされている点は興味深かったです。

⑭ サッカーとマルチスポーツの可能性からスポーツの価値について考える

 髙田有人先生(株式会社クラスティブ、VIRDSスポーツアカデミー代表)による講義でした。

 サッカーができるようになるにはサッカーの練習をしなければならないが、固執せず、同時にサッカー以外のスポーツにも取り組む方がサッカーにとっても有益である、という理念のもと、先生は活動されているとのこと。小・中学生を対象にしたVIRDSマルチスポーツアカデミーでは、スポーツ間を行き来できるようなシステムになっているそうです。

 早期専門化教育によってフォームを固定させてしまうと後々修正が大変だというお話や、複数のスポーツを体験することで様々な動きを覚え、将来の故障を防止できるというお話には非常に説得力がありました。

身体・スポーツ・社会Ⅰ

 「身体・スポーツ・社会Ⅰ」では、スポーツが社会にどう浸透しているかについて、サッカーを中心に考えていきます。

① イントロダクション

 第1回目は、保健体育研究室(2022年度以降、基盤教育センター身体知領域)の原仲碧先生による講義でした。講義のなかでは、サッカーの起源と、サッカーを含めたスポーツの、社会との関わりかたについて見ていきました。

 まずは、サッカーの起源について。いくつかあるサッカーの起源のうち、「カルチョ・ストーリコ」と呼ばれる、格闘技のように激しいバトルを繰り広げるフィレンツェの古式サッカーと、「ロイヤル・シュローブタイド・フットボール」と呼ばれる、イギリスのアシュボーンで行われる8ヘクタールの広大な敷地を使った試合の様子をビデオで観ました。

 次に、スポーツの社会との関わりかたについて。スポーツには、人と人とのいさかいを緩和する働きがあります。一例として、エジプト出身でムスリムのサッカー選手、モハメド・サラーの功績を辿りました。

② サッカー文化の構図~熱狂から読み解く~

 保健体育研究室(2022年度以降、基盤教育センター身体知領域)の鈴木守先生による講義でした。まずはサッカーの特殊性について。多くのスポーツが足で移動し、手で操作するのにたいして、サッカーは足で操作するスポーツであること、さらに、理性的な手とは対照的に野性的性格を持つ足のプレーは運や偶然に支配されるため、サッカー試合においてはどんでん返しが多いことなどについてのお話がありました。

 また、サッカーが宗教儀礼、祭りとしての存在意義を失い、勝敗にこだわらない美しい遊戯から、W杯に代表される、勝利にこだわる競技へと変化した理由を、社会の文明化という観点からも見ていきました。

③ 「心の準備が勝敗を左右する」サッカーの心理学

 保健体育研究室(2022年度以降、基盤教育センター身体知領域)の島崎崇史先生による講義でした。はじめに、心・技・体の うち、試合で最も重要なのは心であるにもかかわらず、海外と比べても、日本のメンタル面を強化するトレーニングは遅れているという現状についてのお話がありました。

 さらに、スポーツ選手がどのようにスランプを克服するかについて、イタリアのセリエAのインテル所属だった頃の長友佑都選手の例から、自信を高める方法について、パク・チソン選手の例から見ていきました。

④ 組織マネジメントの実態と地域スポーツクラブの可能性

 東洋大学の谷塚哲先生による講義でした。はじめに、JFA(日本サッカー協会)、Jリーグを含む多くのスポーツ団体が非営利組織であるという状況を踏まえ、「非営利」という語に対する一般的な誤解(×「非営利」とは、利益を出さないこと)についてのお話がありました。正しくは、利益を一部の人の間で分配する営利にたいして、利益を分配せず、次年度予算に繰り越すのが非営利です。

 地域のスポーツクラブ(非営利組織)が主体となって国のスポーツ文化を構築しているドイツ等に比べ、地域住民の結束力が弱く、自治体やボランティア団体に頼りがちの日本ですが、地域主体を理念とするJリーグは、J2のクラブを中心に、非営利で総合型地域スポーツクラブを運営し、地域と連携しながら、スポーツの普及や育成に取り組んでいるとのことでした。

⑤ つくばFCのマネジメント~世界一幸せなクラブ作りを目指して~

 つくばFC(Tsukuba Football Club)代表の石川慎之助先生による講義でした。「すべての人が、生涯、素晴らしい環境でスポーツを楽しめるようにする」という理念のもと、茨城県つくば市を本拠地として結成されたつくばFC。その活動は、Jリーグやなでしこリーグを目指すだけにとどまりません。

 学校の体育の授業をつくばFCの選手とコーチが担当するゲストティーチャープロジェクト、田植え前の田んぼでの泥んこサッカー体験や田植え体験ができるアグリスポーツアー等の実施により、地域スポーツの発展や、スポーツ選手にとって重要な食育に熱心に取り組まれている様子を知ることができました。

⑥ スポーツ現場から見えるもの、語ること~新聞記者の視点から~

 朝日新聞記者の潮智史先生による講義でした。スポーツ記事の執筆は、独自の視点や切り口、感じかたの競争のようなものであるとのこと。実際、先生ご自身も、某記事の導入部分で、「パーソナルスペース」という心理学用語を提示し、その一般的な意味を解説したあとで、本題(ゴールを背にして敵に囲まれた狭い空間でもボールを自分の足元に要求する香川真司選手の話)へと入っていくような、独特な書きかたをなさっています。

 他にも、スポーツ記事のなかでは、スポーツとビジネス、スポーツとテクノロジーといった多種多様な問題が扱われていることや、選手の高度な技術やプレーの背景を伝える際には、とりわけ言葉が吟味されているといった、興味深いお話を伺うことができました。

⑦ サッカーを語る言葉と国民性の罠

 国際基督教大学の有元健先生による講義でした。実況のカリスマと謳われた 元NHKの山本浩アナウンサーの言葉「選手たちは、『彼ら』ではありません。『私たち』そのものです」に代表されるように、スポーツメディアは、国民である私たちは同じひとつのものであるという認識、すなわち、国民的アイデンティティ/ナショナリズムを構築する役目を果たしてきたというお話でした。

 あるサッカーチームを見るときに、チームのプレースタイルと国を重ね合わせたがるのも、私たちが「国民」という概念にとらわれているためであり、こうした「ステレオタイプ化」は時に、人種差別を生み出すというご指摘もありました。

⑧ サッカーが作る「私たち」という感覚

 成城大学の山本敦久先生による講義でした。前回の有元先生のご講義に引き つづき、サッカーが生み出す集合的アイデンティティがテーマ。「アイデンティティ」は、プレーする選手と観客の境界を曖昧にして一体感を作り出す半面、「私たち」vs「敵チームのサポーター」というように、境界を明確にして敵対関係を浮き彫りにする残酷な概念であるというご説明がありました。

 また、「私たち」は、応援するチームのプレースタイルが、「私たち」の価値観を反映しているという幻想を抱きがちであるというご指摘もありました。顕著な例が、アルゼンチン出身のディエゴ・マラドーナ選手が、ナポリで絶大な人気を誇ったという事実。よそ者である彼が、ナポリのプレースタイルを体現できてしまったという矛盾こそが、ナポリのプレースタイルがナポリ市民たちによる「想像上のプレースタイル」であることを証明しているというお話は、非常に興味深かったです。

⑨ Football (soccer) in Japan 

 筑波大学の中山雅雄先生による講義でした。はじめに、FIFA(国際サッカー 連盟)の活動について。発展のためのフットボール(フットボールで世のなかを良くしよう)と、フットボールの発展(フットボール自体を発展させよう)という2つの理念のもと、学校に教材アプリやサッカーボールを支給しているというお話がありました。つづいて、JFA技術委員会の活動について。ユニクロをスポンサーに迎えて、才能ある子どもたちにサッカーに出会ってもらうためのイベント、JFAフェスティバルを開催したり、TOYOTAの社員と連携して、幼稚園に出向いてサッカーを教えるキッズ巡回指導に力を入れているといった、興味深いお話を伺うことができました。

⑩ スポーツから見るダイバーシティ~そのままの自分が強み~

 サッカー指導者の石原孝尚先生による講義でした。「チーム」という、共通の目的を持ってひとつのことを為そうとする集団において何が大事であるかについて、チームの監督を務められたご自身の経験をもとに語ってくださいました。

 各自の得意なこと、興味があることをチーム全体のなかで活かすようにする、目的に人を合わせる(あらかじめ考えておいた戦略にしたがわせる)のではなく、人に目的を合わせる(各自の持つ能力に基づいて戦略を考える)、相手の言葉を額面どおりに受け取らず、言葉の背後にある気持ちを考える、といった先生の指導理念は、サッカーの枠を超えて、社会に生きる皆が心に留め置くべきことだと思いました。

⑪ エキスパートのわざをどう伝えるか~サッカーと「わざ言語」~

 日本大学の北村勝朗先生による講義でした。優れた指導者は、指導する相手の習慣や性格に応じて言葉を巧みに選びながら、心理的な支援を実践しているというお話でした。特に、リトルリーグの監督が、食事の際にいつも醤油をかけるピッチャーにたいして、「もう一滴醤油を垂らしてごらん」とアドバイスした、というエピソードは興味深かったです。

 また、リーダーシップには、目の前のことだけを考える反応的リーダーシップと、振りかえったり、周囲や前後の状況を見ながら考える内省的リーダーシップの2種類があり、優れた指導者は後者のスキルを持っているというお話もありました。

⑫ サッカー指導者の仕事~筑波大学蹴球部を例に~

 筑波大学蹴球部監督の小井土正亮先生による講義でした。筑波大学蹴球部には、試合に出場する選手部員以外にも、選手を陰からサポートする部員が居て、それぞれの部員が、自分の得意なことを活かしながら大好きなサッカーに関わっているというお話でした。最新のテクノロジーを用いながら、選手のプレースタイルや相手チームの攻撃パターンを分析する班や、選手の用具のメンテナンスを行う班などがあるそうです。サポート部員が将来、プロサッカーチームのコーチになるケースもあるとか。選手として表舞台で活躍しなくても、サッカーと深く関わっていける方法があることをはじめて知りました。

⑬ 選手の権利と組織の利益~韓国プロサッカー選手会の事例から~

 KPFA(韓国プロサッカー選手会)事務総長のHoon Ki Kim先生による講義でした。プロサッカー選手会は、選手たちを構成メンバーとする組織で、日本にもJPFA(日本プロサッカー選手会)が存在します。

 KPFAは、2011年に起きた八百長事件をきっかけに、選手の地位向上と選手たちの結束を目的として、選手ひとりひとりに声を掛けながら作られたとのこと。活動内容は多岐にわたり、八百長が起きる理由のひとつである給料未払いの問題や、試合中に脳しんとうで倒れた場合、敵味方に関係なく助け合うルールといった選手たち自身のための話し合いは勿論のこと、協会やリーグと協力し合って、社会のために役立つ福祉やチャリティーにも力を入れているというお話でした。

⑭ 全体のまとめ~Japan's Wayは必要or不要?~

 保健体育研究室(2022年度以降、基盤教育センター身体知領域)の原仲碧先生による講義でした。JFA(日本サッカー協会)がスローガンとして掲げる「ジャパンズウェイJapan's Way(日本人の良さを活かした、日本人らしいスタイル)」の曖昧さについて、皆でディスカッションを行いました。「日本人らしさ」とは何か。「ソフィアンズウェイ(上智大らしさ)」に置き換えてみるとどうか……。

 地元のサッカークラブが地域と強く密着している例として、外国のサッカースタジアムの紹介もありました。設備は日本よりはるかに充実していて、試合のない日でも、スタジアム内のカフェやレストランは利用可能、ラウンジは会議室として提供されているとのこと。

 日本のサッカー界、ひいては、日本社会が抱える課題が浮き彫りになるようなお話でした。