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漢文学演習Ⅱa
[2019年度開講科目]
言葉を通じて古人と出会う
国文学科 福井辰彦 教授
〈正しい〉読みのための〝実地訓練〟
国文学科では、国文学(古典文学・近代文学)、国語学、漢文学の各分野で演習科目を開講しています。演習では、学生自らが各分野の作品・文献を調査・読解した結果を発表し、それをめぐって討議を行います。
文学・語学研究においては、作品や資料を、一字一句もゆるがせにせず、過不足なく読み解くことが、出発点であり、また究極の目的でもあります。そのための力をつける、実践的な授業が演習科目だと言えるかもしれません。
一語一語の探求から言葉の世界を開く
私の担当する「漢文学演習」では、『聯珠詩格(れんじゅしかく)』という書物を用いて、唐代から宋代にかけての詩を読んでいます。
詩を正確に読み、深く味わうためには、詩中の一語一語について、丁寧な考証が必要です。辞書に書かれた語意を当てはめるだけでは、詩はその世界をのぞかせてもくれません。それぞれの語が、実際どのように使われているか、できるだけ多くの例を探し、それらを読み解き、言葉の歴史、性格、色やにおいといったものを、時間と手間をかけて明らかにしてゆきます。そのときはじめて、それまで無愛想に、四角く身を固くしていた文字たちが、生き生きと動き始め、そこに描かれた風景や物語、そこに込められた古人の思いを私たちに見せてくれるのです。
江戸時代の儒学者・荻生徂徠(おぎゅうそらい)は、古語を学んで学んで学び抜き、古人の口ぶり、物の見方・感じ方まで学び取ることが出来たなら、いつでも古人と会うことができる、と言いました。私たちもまた言葉を通じて古人に出会うために日々勉強を続けています。
高校生へのメッセージ
「今の時代、昔の書物を読んで何の役に立つか」と思う人も多いかも知れません。しかし、人間が道具や部品のように扱われる現代、内容空疎な言葉が氾濫し真実を覆い隠す今という時代だからこそ、異なる時代を生きた先人たちに、人が生きるとは本来どういうことだったのか、言葉の役割と力とはいかなるものであったか、改めて学ぶ必要があるのではないでしょうか。それはお金儲けとは直接結びつかないし、すぐに社会で役に立つわけでもないけれど、畢竟(ひっきょう)、言葉によってしか、物事を知り、考え、伝えることができない我々人間という生き物にとって、極めて重要で価値のあることであるはずです。
※本ページは2019年度開講時の情報にもとづいています。